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2019年 06月 27日 ( 1 )

原田マハさんの『美しき愚かものたちのタブロー』〜松方コレクション

原田マハさんの『美しき愚かものたちのタブロー』。

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西洋絵画の松方コレクションの収集と返還の物語です。

いつもはすぐに夢中になる原田マハさんの文章なのですが、政治的なかけひきの記述が多く人の関係がむずかしいかなと思いましたが、中盤以降は夢中で読めました。

松方幸次郎さんは、信用をおける美術のアドバイザーとともに、そのとき前衛の画家の作品を何千も買い、欧米にひけをとらない美術館を日本に作ろうと夢みた人です。

タイトルの「美しき愚かものたちのタブロー」の意味が、途中まで読んでわかりました。

ついニ、三十年まえまでは「タブローのなんたるかを知らぬ愚かものたちの落書き」などと批評家に手厳しく揶揄されま画家たちーマネ、ルノワール、ピサロ、ドガ、セザンヌ、ゴッホ、ゴーギャン、スーラなどを、時代の最先端に立ち、保守的な画壇の様式と考え方に果敢に切り込む「前衛」の画家と目し、彼らを売り出した画商たちがいた。
[原田マハ、『美しき愚かものたちのタブロー』より]

美術品収集をしていることは、この時期、愚かもの扱いされはしても決して褒められたものではないと、松方自身、よくわかっていた。
[原田マハ、『美しき愚かものたちのタブロー』より]


松方の美術コレクションは、戦争のため、ロダン美術館からアボンダンという村に疎開したことが書かれています。
松方が集めたコレクションの大方は日本に寄贈返還のされたとのことですが、ゴッホの「アルルの寝室」などは返還されなかったとも書いてありました。

松方氏が直接モネから手にいれた「睡蓮、柳の反映」は行方不明とマハさんの小説には書かれていますが、ルーブル美術館の収蔵庫で破損された状態で見つかったそうです。そのAIを使ったデジタル修復の過程と、その修復作品が国立西洋美術館で展示されることがNHKスペシャルで放映されていて、興味深く見ていました。

松方コレクションの集められた経緯や散逸してしまった経緯を知ると、上野の国立西洋美術館に見にいきたくなります。


松方さんの印象深い記述です。

ある歴史上の人物が出てくるのは、その時点では単なる「偶然」でしかない。しかし、後世のある時点に立脚して、歴史の中でその「偶然」をみつめたとき、それがいかに「必然」であったかがよくわかる。
[原田マハ、『美しき愚かものたちのタブロー』より]



by momokororos | 2019-06-27 22:44 | | Trackback | Comments(0)