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2019年 06月 24日 ( 1 )

喜びと不安と〜江國香織さんの『彼女たちの場合は』

江國香織さんの『彼女たちの場合は』。

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江國香織さんの本は、読みいってしまう不思議な魅力があります。

今回の小説は、日本人の17歳と14歳の2人の少女がアメリカを旅する物語。2人と一緒に旅しているような感覚で読んでいました。

旅の途中、居ついたところで街や人の日常に触れながら生活し、その日常となりつつある現実からまた新たな地への冒険が始まります。
ときにいやなことは起きるのですが、彼女たちにしても読み手にしても憂鬱にならないのは、その土地土地でいい人に出会えたり、その地をあとにしてまた新たな旅にでることがあるからかもしれないと思いました。主人公の彼女たちの喜びと不安の気持ちが新鮮で素直にはいってきます。かなりの長編だけど飽きさせないのは、江國さんの筆致がなせる技なのかもしれません。


水音は聞こえないが、窓の外を流れているカンバーランド川の気配に逸佳は耳を済ます。水面は、夜気と同じくらい黒々として見えるだろう。街灯の光が幾つも映り、おなじ場所に浮かんだまま、小さく揺れているはずだ。
[江國香織、『彼女たちの場合は』より]




旅を通じた、面倒なこと、気持ち、そして秘密。

「ボーイフレンドはいるの?」
尋ねられ、逸佳の頭のなかに、咄嗟に"ノー"が響いた。ボーイフレンドがいないという意味ではなくー、そういう話題自体が、逸佳には"ノー"なのだった。それで二重の意味を込めてノーとこたえ、
「必要ないの」
とつけ足した。募集中だという誤解をされないために。
[江國香織、『彼女たちの場合は』より]


「大人になると、こんなふうに誰かと話したりしないものなんだ。こんなふうに、自分の感じたことを正直にはね」
(中略)
「なぜなのかはわからないけれど、大人は普通、こんなふうに誰かに気持ちをひらいたりしない」
大人じゃなくてもだよ。逸佳は胸の内で言った。私はまだ十七歳だけど、普通、こんなふうに誰かに気持ちをひらいたりしない。
[江國香織、『彼女たちの場合は』より]



「たとえばこの朝がどんなにすばらしいかっていうことはさ、いまここにいない誰かにあとから話しても、絶対わかってもらえないと思わない?」
[江國香織、『彼女たちの場合は』より]




この物語の中に、アーヴィングさんの『ホテル・ニューハンプシャー』の本の話しがでてきて、2人は、その地のニューハンプシャー州をめざして旅をする場面がでてきます。私も、小説の中にでてくるところによく旅したくなる気持ちになります。
ジョン・アーヴィングさんの、『熊を放つ』、『ガープの世界』を読んでいますが、『ホテル・ニューハンプシャー』でくじけました。『熊を放つ』や『ガープの世界』も内容を覚えていないほど昔です。
どこへしまってあるのかわからないですが、また読みかえそうかなっと思いました。








by momokororos | 2019-06-24 22:16 | | Trackback | Comments(0)