久しぶりに読書日記です。
昨日から雨降りです。しばらく雨が続くみたいなのですが、雨の日の音の風景が大好きで、 窓や道に打ちつける雨の音や雨樋を流れる水の流れる音に耳を傾けています。 テレビや音楽を消してそんな雨の風景を感じながら、小川糸さんの本を読んでいました。 「喋々喃々」(ちょうちょうなんなん)小川糸、ポプラ社 去年読んだ小川糸さんの「食堂かたつむり」がとっても素敵で、この本も楽しみでした。 今回は東京谷中が舞台で、アンティークきもの店「ひめまつ屋」を営む主人公の物語です。 主人公はかわらしいココロをもつ女性で、自分の気持ちにとまどい悲しみ喜びます。 小川糸さんの文章は、言葉、しぐさ、気持ち、そして風景の描写が1つ1つ丁寧で 優しさが流れてきてココロの中にすっとはいりこんできます。 1つ1つの章を読み終えるたびに、ココロの中に風が吹くかのような感じがします。 おいしいものをゆっくり味わい、季節の風情を感じながらの会話はなんて素敵なんでしょう~ 谷中をはじめ、湯島、上野、吉原、浅草、向島と舞台は変わりながら、 おいしいものとココロの風景をつむぎあげていきます。 おいしいってことってこんなことなんですね、とあらためて感じてしまいます。 これだけ下町のお店が実名で出てくるのも珍しい。カフェに飲み屋にうどんに蕎麦屋... 行ったことあるお店はうれしいようなこそばゆいような感じがします。 思いをかさねることができる風景や味に、共感できる気持ちが自分の中に流れていきます。 谷中はしばらくご無沙汰なのですが、 饂飩屋さんに、カフェ、美術館に、庭園に、居酒屋に行ってみたくなりました。 主人公の感情にひきこまれてしまい最後は涙でした。 終わりかたも素敵な書きかたをしていてずっと余韻が残る作品かもしれません。 本の帯に書いてある喋々喃々の意味です。 【喋々喃々】男女がうちとけて小声で楽しげに語りあう様子。 去年読んだ「食堂かたつむり」も、ものすごく素敵で、 私の2008年に読んだ本のベストにもはいっている本です。 「食堂かたつむり」小川糸、ポプラ社 そのときの感想はこんなことを書いています。 ---- 小さな山の中の村で食堂を手作りで作り、料理をだす主人公。 とってもいい雰囲気で物語が進行していきます。 山のおいしい空気が自然に肺に流れこむかのように、 物語が素直にココロにしみいるかのような感じがします。 料理と自然の恵みと気持ちがハーモニーを奏でます。 優しさにせつなさに、ときどき胸がキュンとしてしまいます。 食べる人の心や自然の恵みを活かして作りあげる世界は 料理の域を超えていろんなことにいつくしみを感じます。 料理を作る喜びと料理を食べる喜びが絶妙にからみあって織りあげる世界。 こんなに素敵に料理の喜びを表現した本は、 かつてあったかなって思うほど素敵な本でした~ ---- 小川糸さんの小説は、おいしい料理と雰囲気と気持ちが静かにハーモニーを奏でています。 おいしいってのは、そんな五感すべてで感じて楽しめるものだと思います。 私もそんな味わいかた、さらには過ごし方をしたいと思ってしまいます。 恋のものがたりでもあるのですが、生きていく気持ちの力をさりげなく感じさせてくれます。 次の作品もとっても楽しみです。
by momokororos
| 2009-02-24 22:18
| 読書
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Comments(5)
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ameri
at 2010-07-10 18:43
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はじめまして*
私も小川糸さんの作品大好きで、ふとしたときには読み返したりしています。 大変恐縮なのですが、momokororosさんは大変な読書家でいらっしゃるようなので、よろしければ何か蝶々喃々、あるいは食堂かたつむりのようにほっこりとしたかわいらしい作品でおすすめのものがあればぜひ教えていただきたく思います。 突然申し訳ありません、よろしくお願いします♪
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momokororos at 2010-07-11 11:52
はじめまして~
本が好きなんですね☆いいですね、本の世界。 ほっこりとかわいらしい本ですか!? いい本あったら、私も紹介してもらいたいです。 コメント欄の制限により1つずつくらいしかアップできずです(涙) 小川糸さんの同じようなやさしい時間の流れと 気持ちの描写を自然の中に感じるような本です。 ちょっと悲しい物語だけど、 2007年に読んだ本 の中で、自分のベストな本の1つなんです。 「ブラフマンの埋葬」小川洋子、講談社文庫 日記に載せた感想より ---- 小川洋子さんの小説、 「ブラフマンの埋葬」 が文庫(講談社文庫)で出ていたので読んでみました。 とってもやさしい流れを奏でています。 いつものことながら、文章から美しい旋律が聞こえてきます。 ブラフマンとの遊びを通じて気づく自然や優しさが 溢れてきます。 ブラフマンの姿が自分の中にありありと思い浮かんできます。 小説の中にでてくるスズカケの木に思いを馳せます。 スズカケの木が窓から見える京都の大好きなカフェがあって、 一層想いが重なります。
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momokororos at 2010-07-11 11:55
ameri さんへ
「食堂かたつむり」は、2008年に読んだ本の中で 自分のベストな本の1つなんですが、 この「パコと魔法の絵本」も2008年のベストな 本の1つです。映画化された本ですが、やさしさに涙です。 「パコと魔法の絵本」関口尚、幻冬舎文庫 日記に載せた感想より ---- ココロあたたまるお話しで、あっというまに感情移入 してしまいました。 そして途中からは涙でした。とっても優しい物語です。 この本の中にでてくる「ガマ王子対ザリガニ魔人」という 絵本があるのですが、 ほんとにあればいいなあって 思いました。 何回でも読みたい本になってしまったような感じします! 映画ももうすぐ公開だそうです。 もう少し紹介しますね。
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ameri
at 2010-07-13 22:31
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いろいろご紹介いただきありがとうございます*
小川洋子さんは薬指の標本やおとぎ話の忘れ物などしか読んだことがないので、ぜひ読んでみたいと思います!! パコも原作の本があったのですね!知らなかったです。 ありがとうございます☆ momokororosさんのブログはカフェやお店などの紹介なさっているのもとても素敵ですね♪ これからちょこちょこコメントさせていただくかもしれません* そのときはよろしくお願いいたします 笑
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momokororos at 2010-07-13 22:51
こんばんは、ameriさん
絵本は、その場で感動や発見を共有できるのですが、小説などはなかなかその場で、というわけにはいきませんね。それでも素敵な本は共有していければ、と思います。 この前に紹介できていない本です。 「なんくるない」吉本ばなな、新潮文庫 日記に載せた感想より ---- 沖縄を舞台の小説です。 ばななさんは海の情景を感じさせることでは たぐいまれな能力ですね。 沖縄の人と風土が人を包みこんで、 自分の考えや想いが風景に溶けだしていく。 なんだか、ばななさんの文章を読んでいると 力が抜けていきます~ 繊細だなあ、優しいだなあ、って感じながら、 思いきりいいなあ、そうなんだろうな、 って感じる素敵な文章です。 かわいらしい本では一番好きなのが、 「ぼくの小鳥ちゃん」江国香織、新潮文庫 です。 またいろいろお話しできるといいいですね~☆ ありがとうござます。
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