荒木陽子さんの『愛情生活』。 この前、中目黒のCOWBOOKSさんに寄っていたら、荒木経惟さんの写真集とともに、荒木陽子さんの本が何冊か置いてありました。荒木陽子さんが書いた本は初めてみました。 荒木経惟さんの写真集は、『食事』という写真集を持っているのですが、その写真集は、奥さんの陽子さんが作る料理の写真を載せていて、陽子さんが亡くなる少し前までの彼女が作った料理の写真がのっています。食のエロティシズムも感じる写真なのですが、食事の写真がカラーからモノクロの写真へ移るその変化はさみしさを感じます。 『愛情生活』を読むまでは、荒木陽子さんは、荒木経惟さんとは正反対の性格を想像していたのですが、経惟さんと一緒に楽しんでいる奔放な人でした。 経惟さんの女性関係の隠すことのない言動に対して、よくできた奥さんだと言われることがあると本人も書いているのですが、あっけらかんとした性格。彼とともに楽しみ、彼の怒りやわがままにつきあい、しかもそれを凌駕しているような太っ腹な陽子さんに好感がもてます。 食べものの話しもいろいろ出てきます。 少し長いですが、引用します。 我が家では近頃魚料理をメインにする事が多く、焼き肉やビーフ・ステーキといった、肉を食べるぞ、の料理がほとんど姿を消している。これは何故かというと、夫は外でイヤというほど、スキヤキやしゃぶしゃぶなどを食べているらしいので(仕事の後で)、家でまでは食べたくないらしいのだ。 「何が食べたい?」 と聞くと 「そーだな、サッパリしたものがいいな」 と彼は必ず答える。 私も年令のせいか、アッサリ好みになってきてはいるが、それでも、スキヤキを何ヶ月も食べてなかったりすると、 (あの、しょーゆと砂糖がからまった、グツグツと煮立っている、牛肉と長ねぎと焼き豆腐を、存分に食べてみたい!) とか、 (ニンニクとバターの香りが立ち上るぶ厚いステーキを切ってみると、中はトロッとした生々しいレアで、その色と艶が、こちらの食欲を淫らなまでに誘い、思わず二百グラムの肉片をペロリと平らげてしまったのであった) などとゆー妄想にとりつかれてしまったりする。 鴨とか仔羊とかの、ちょっとクセのある肉が私は好きで、特に骨付きのラムを手摑みでかじっていると、ラムの脂で唇がテカテカに滑ってきて、不思議と妖しい気分になったりする。猛々しいような、自虐的なような心持ちに捉われて、赤ワインをグイグイと押りたくなる。 食べ物の事を書いていると、どうもオカシナ雰囲気になっていけない。さっきの、家でスキヤキを何ヶ月も食べていないので、牛肉が恋しい、なんていう箇所も、何か変な風に勘ぐられそうで心配だなあ。大体外でばかし肉を食べてくる夫がいけないのだ。外でばかし食べないで、家でも食べなさいよ、本当に。なんて書くとまたまたヤラシー感じになってきちゃって、どーしたらいーのでしょーか。 [荒木陽子、『愛情生活』より] 陽子さんのこの荒々しさはどうでしょう。。 経惟さんだけが変態かと思っていましたが、陽子さんも十分変態だったんだ、と思わせる文章がたくさん載っています。 そして感じるのは、経惟さんと陽子さんが本当に愛しあっていたこと。荒木経惟さんの『食事』の写真集や荒木陽子さんと経惟さんの『東京日和』を読むと一層そんなことを思います。
by momokororos
| 2020-08-08 22:17
| 本
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