マヒトゥ・ザ・ピーポーさんの『銀河で一番静かな革命』。 先日、尾道の紙片さんで手にいれた本です。 世界の終わりを迎える街を舞台に、ミュージシャン、ライブに通う女性、おじいさん、子どもやその母親のそれぞれの思いをみつめていく物語です。 自分が何を求めているのか、自分らしさとは何なのかがわからない、先の見えない気持ちをかかえながらも、優しさや希望が見え隠れしていきます。 五感で感じられる情景表現が素敵です。 鶏ガラと大きめに切ったにんじんが、沸騰する鍋の中で小さく揺れ、ダンスをしている。 油をひいたフライパンで飴色になるまで玉ねぎを炒める。小粒の油が弾ける音、野菜の甘い匂いが部屋に立ちのぼり、台所の小窓が薄く結露している。 [マヒトゥ・ザ・ピーポー、『銀河で一番静かな革命』より] 音や匂い、そして視覚的な描写が加わり、その場の臨場感をうまく表現しています。 目の前を透明な風が吹く。ビルの隙間から這ってきた風は、意思を持っているかのような曲線で、赤い革靴の紐を揺らし、居酒屋の橙色の提灯を揺さぶっては、斜め上を走る井の頭線の線路をぐるりと一周して、道玄坂の方に向かって吹き抜けていった。 [マヒトゥ・ザ・ピーポー、『銀河で一番静かな革命』より] 靴紐や提灯のいろ、井の頭線の電車の音や道玄坂の喧騒をイメージさせるような表現で、ふと、泉鏡花さんを思いだしました。 『いろは、よく見てみな。この世界は、実は贈り物で溢れてる。その一つ一つを何て呼ぶかなんだ。』 [マヒトゥ・ザ・ピーポー、『銀河で一番静かな革命』より] 世界の最後の日、いろはという子どもとおかあさんの2人は、自分への贈り物がどんなものがあったかを挙げていきます。 次々とでてくる贈り物の断片的な情景。 当たり前の日常も贈り物になっていることに親しみとうれしさを覚えます。他人の体験に想いを重ねられることや、始まって終わりのある世界へのいつくしみに共感します。 贈り物のこと、今ならたくさんわかる。 (中略) 「いろは、歌いながら何で泣いているのよ。そんなにその歌好きだっけ?」 「ううん。ちょっとね。贈り物がいっぱいでさ。」 [マヒトゥ・ザ・ピーポー、『銀河で一番静かな革命』より]
by momokororos
| 2019-06-17 21:41
| 本
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