中学校の教科書に採用されたという大岡信さんの「ことばのちから」。
桜の幹で染めると桜色になり、桜の花で染めると緑色になることを大岡さんに話したら、大岡さんが「ことばのちから」の中で素敵に綴ってくれた、と志村ふくみさんが著書の「色を奏でる」のなかで書いています。 ![]() 大岡さんの「ことばのちから」は読んでいないけど、志村さんが書いた桜のくだりが「色を奏でる」と「一色一生」にでてきます。 少し長いけど、「一色一生」から引用します。 その後、桜、桜と思いつめていましたが、桜はなかなか切る人がなく、たまたま九月の台風の頃でしたが、滋賀県の方で大木を切るときき、喜び勇んででかけました。しかし、その時の桜は三月の桜と全然違って、匂い立つことはありませんでした。 その時はじめて知ったのです。桜が花を咲かすために樹全体に宿している命のことを。一年中、桜はその時期が来るのを待ちながらじっと貯めていたのです。 知らずしてその花の命を私はいただいていたのです。それならば私は桜の花を、私の着物の中に咲かせずにはいられないと、その時、桜から教えられたのです。 植物にはすべて周期があって、機を逸すれば色は出ないのです。たとえ色は出ても、精ではないのです。花と共に精気は飛び去ってしまい、あざやかな真紅や紫、黄金色の花も、花そのものでは染まりません。 友人が桜の花弁ばかり集めて染めてみたそうですが、それは灰色がかったうす緑だったそうです。幹で染めた色が桜色で、花弁で染めた色がうす緑ということは、自然の周期をあらかじめ伝える暗示にとんだ色のように思われます。 (志村ふくみ、「一色一生」より) 桜の幹で染めた色が桜色なんて素敵です。 葉が生い茂る九月の台風の時期の桜だと、桜色のお花を咲かせるにはまだ早いということ。見えないチカラを蓄えている植物のことが一層いとおしくなります。 志村ふくみさんの「一色一生」は、何度読んでも味わい深い本です。
by momokororos
| 2014-02-05 22:35
| 芸術
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