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2017年 08月 01日

つきうごかされる情動〜瀬戸内晴美さんの『かの子繚乱』

岡本かの子さんのことを書いた瀬戸内晴美さんの『かの子繚乱』。

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かなり魅了させられる本です。
他の人から見聞きするかの子さんの姿を瀬戸内さんなりに解釈し、かの子さんの魅力を伝えています。

かの子さんのことを書いたくだりです。

要するに、かの子の感情も行動も、物事の両端をゆれ動き、その振幅度の広さは常軌を逸した感を世人に与えるらしかった。中庸を欠く平衡感覚の欠如、強烈なエゴの示顕欲、王者のような征服欲、魔神のような生命力、コンプレックスと紙一重の異常なナルシシズム……そんなものがかの子の体の中には雑居し、ひしめきあい、その結果、外にあらわれる言動が世間の常識と波長が合わなくなるのである。
奇矯と見られ、きざとさげすまれ、避難と誤解にあう度、かの子は世間との違和感に打ちのめされ、終生、苦しみつづけなければならなかった。
幸いかの子は全世界を敵に廻しても恐れなくていいほどの、強力な理解者に恵まれていた。夫一平と、一子太郎である。
[瀬戸内晴美、『かの子繚乱』より]

かの子さんの息子は、岡本太郎さん。
太郎さんは、かの子さんから大きな影響をうけたんだろうなって思います。
さらに続きを引用します。

生前のかの子に面識のある人々、殊に女性の間では、かの子は徹底的に醜いとされているようだ。(中略)
「あの美男子の一平さんがどうしてかの子のような不器量な女をお嫁にしてくれたんだろうって、その当時からうちで不思議がったものですよ」
[瀬戸内晴美、『かの子繚乱』より]

こんなにまで言われていたかの子さんですが、文章は続きます。

不思議なことに、それらと同時に、一方では、かの子の容貌に対して全く反対の意見を聞くことであった。(中略)
川端康成にかの子の泣き顔を叙した文章がある。
《岡本さんは厚化粧のために、かなり損はしたが、よく見ると、あどけなくきれいで、豊かな顔をしてゐた。それが泣き出すと一層童女型の観音顔になって清浄で甘美なものを漂はす時もあつた。岡本さんの美女(小説の中の)達の幻と共に浮かぶのは、この岡本さんの大きい泣顔である。涙を浮かべながら、苦もなく微笑んでゐるー》
[瀬戸内晴美、『かの子繚乱』より]

川端さんがかの子さんのことを童女型の観音顔というくだりがありますが、先日、倉敷の大原美術館に行っていたときに、工芸館の棟方志功さんの展示室で、岡本かの子さんの歌に棟方志功さんが版画を絵を描いた、「女人観世音版画柵」が展示してありました。
棟方志功さんが、岡本かの子さんの「女人ぼさつ」の詩を愛し版画にしたのが、「女人観世音版画柵」です。前に青森の青森市民美術展示館でも見ていた作品です。

「棟方志功さんの板画~青森市民美術展示館・棟方志功記念館」〜2015年 8月 6日の日記
http://momokoros.exblog.jp/23530315/

素晴らしい版画に、素敵な歌です。
棟方志功さんは、岡本かの子さんの歌だけでなく、本人も意識して描いた作品ではないかなと思います。

岡本かの子さんの詩を版画にしたものが他にも飾られていました。

薔薇見れば
薔薇の笑ひ
牡丹に逢はば
牡丹の威
あやめの色の優しさに

牡丹は岡本かの子さんが好きなお花ですが、他のお花もそれぞれが美しい、ひいては、それぞれの人も美しいということでしょうか。
大原美術館に前から飾られていたどうかはわかりませんが、こちらの版画も詩も素敵だなと思いました。


かの子さんの振る舞いと一平さんのやさしさ。『かの子繚乱』のはじめのくだりを読むだけで、一平さんがかの子さんのことを神格化するほど愛していたことがよくわかります。すべてを受けいれる気持ちはすごいなって思います。
このブログを書き終える直前に、もしかしたら、かの子さんの情動に対する一平さんの気持ち、それはやっぱり情動といえるものかもしれないものにわたしは惹かれているのかもしれない、とふと思いました。
素直に情動を表現できることに、魅力と憧れを感じます。

『かの子繚乱』は、少しずつしか読めていないのですが、今年読んだ本の中で特にいい本かなと思います。


「かの子さんへの想い〜岡本一平さん」〜
2017年 7月 1日の日記
http://momokoros.exblog.jp/25886290/


by momokororos | 2017-08-01 23:00 | | Comments(0)