色あふれる情景〜泉鏡花さんの『春昼・春昼後刻』

泉鏡花さんの『春昼・春昼後刻』。

部屋の本を整理しているときに目についたので、ふたたび読んでみました。

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前に読んだときは、金沢の泉鏡花記念館に、『春昼・春昼後刻』に引用されている小野小町の歌が展示されているのに興味を惹かれました。

うたた寝に恋しき人を見てしより
夢てふものは頼みそめてき

うたた寝した時の夢に、恋しい人を見てしまってからはあなたが私を想ってくれていると夢を頼りにし始めるようになってしまった。


「春昼」はこんな始まりでした。

近頃買求めた安直な杖を、真直に路に立てて、鎌倉の方へ倒れたら爺を呼ぼう、逗子の方に寝たら黙って置こう
[泉鏡花、『春昼・春昼後刻』より]

泉鏡花さんが逗子に移り住んだときに書かれた作品とのことです。

あらためて読んでみた『春昼・春昼後刻』の色の描写に驚きました。


この路を後へ取って返して、今蛇に逢ったという、その二階屋の門を曲ると、左の方に背の高い麦畑が、なぞえに低くなって、一面に颯と拡がる。浅緑に美い白波が薄りと靡く渚のあたり、雲もない空に歴々と眺めらるる、西洋館さえ、青異人、赤異人と呼んで色を鬼のように称うるくらい、こんな風の男は髯がなくても(帽子被り)と言うと聞く。
[泉鏡花、『春昼・春昼後刻』より]

客人は、堂へ行かれて、柱板敷へひらひらと大きくさす月の影、海の果てには入日の雲が焼残って、ちらちら真紅に、黄昏過ぎの混沌とした、水も山も唯一面の大池の中に、その軒端洩る夕日の影と、消え残る夕焼の雲の片と、紅蓮白蓮の咲き乱れたような眺望をなさったそうな。
[泉鏡花、『春昼・春昼後刻』より]

目の前に色あふれる情景が浮かんでくるかのようです。

読みづらさはあるのですが、わからないところはそのままに飛ぶかのように読んでいると、泉鏡花さんの世界の魅力をわずかばかり感じたかのような気がします。

また金沢の泉鏡花記念館に行ってみようかという気になります。


「金沢慕情(其の四)~泉鏡花さん」〜2015年 5月 20日の日記
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by momokororos | 2017-03-28 22:05 | | Comments(0)

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by ももころろ