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2016年 12月 19日

東京での三様の女性の生き方〜山内マリコさんの『あのこは貴族』

山内マリコさんの『あのこは貴族』。

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山内マリコさんの作品は、わたしの思っている気持ちや憧れている気持ちとピッタリするようなところがあって大好きです。

物語は、慶應で一貫に進学してきた内部生と大学進学で東京に出てきて初めて慶應に入学した外部生たちの違いから始まり、東京に代々暮らしその地位を守り続けてきた”貴族”たる人々と他の人々の振る舞い、女と男の考え方の違いを描き、女性としての生き方を語っている作品です。

一人の男性を接点として、違う境遇を生きてきた3人の女性の生き方が交錯します。

その中の1人の女性が女同士の義理について語るシーンで、江戸時代の近松門左衛門の『心中天網島』の文楽のことを話すのですが、大好きな文楽です。日記で少しだけ触れたことあると思いますが、詳しく書いてみたいです。

女性が男性と対等に話すことについて、3人の女性たちが語り合い、主たる主人公の結婚したばかりの華子は思います。

華子はかすかに戦慄する思いである。なぜならこれまで、自分は主張らしい主張をなに一つしたことがないのだから、足元を見られて当然ではないか。そんなことを思いながら、華子はこの半年間隠してきた気持ちを、彼女たちの前で吐き出したのだった。
[山内マリコ、『あのこは貴族』より]

3人の女性のそれぞれの憧れと葛藤。そしてそれぞれの選んだ生き方を、東京という舞台でなさまざまな人間模様の中で描く秀逸な作品です。

私は東京生まれですが、東京の”貴族”的な世界やいわゆる東京的な風景に憧れているところがあり、山内マリコさんの描く東京の描写や憧れの気持ちに親近感を覚えつつ読みすすめていました。

日本橋室町のマンダリンオリエンタル東京のラウンジのくだりです。

窓の外はすっきりと晴れ渡りまぶしいくらい日が差して、西向きの巨大なガラスからは高層のオフィスビルを望み、そのはるか遠くには富士山らしいシルエットがぽっかり浮かぶ。
[山内マリコ、『あのこは貴族』より]

マンダリンオリエンタル東京がある日本橋室町は好きで憧れの街の1つ。マンダリンオリエンタル東京も憧れのホテルです。
なかなか泊まることはできない高級ホテルなのですが、富士山が望めるオリエンタル東京のラウンジで夕刻から夜にかけての光の変化を楽しんでみたいです。
かつて、新宿の副都心の高層ホテルのラウンジで、夕刻から夜の雰囲気を味わったことがあるのですが、照明をつけずにテーブルのキャンドルだけで暗くなっていく夕べは思い出深いです。

タクシーの窓を雨粒が流れる。運転手は無言でワイパーのスイッチを入れた。夜の東京が雨でびしょ濡れになると、ネオンが滲み、情緒が出る。そういう景色も、華子は好きだった。もちろん、自分がタクシーに乗っている場合に限るけど。
[山内マリコ、『あのこは貴族』より]

このくだりを読んで、都市の中の、秩序と混沌、清楚と猥雑などの相反するものの混在に惹かれながら、混沌や猥雑は、秩序と清楚側から見た憧れにすぎないのかもしれないと思ってしまいました。


by momokororos | 2016-12-19 22:48 | | Comments(0)


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