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2016年 10月 25日

『アリスの人生学校』〜ピエール・マッコルランさんの本

ピエール・マッコルランさんの『アリスの人生学校』を読みました。

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この小説は、二階堂奥歯さんの『八本脚の蝶』に紹介されていた本です。ピエール・マッコルランさんの小説は、『恋する潜水艦』に続いて2冊目です。

折檻に性的倒錯の記述がある小説であることを初めに言っておきたいと思います。


地方の古めかしいきびしいしつけのもとで育てられたアリス・ミューレイ。

アリスが借りて読み友達に貸した禁断の本であるヴォルテールの『カンディード』。読んでいることが親にばれて、禁断の本を読んだアリスや友達は折檻されます。
『カンディード』は、友達から友達に渡り、年頃の女の子をとりこにしましたが、アリスを折檻する継母もはまってしまいます。自分と同じように娘が同じ本を楽しんだことが我慢なりません。「恥辱」を与えられながら折檻します。

その本の発端が知り合いの召使いの女の子からのものだとわかり、主人に問いつめられる召使いの女性。

だから次にじぶんが呼ばれれば、どんなことが起こるか、ちゃんと知っているのだ。それで、すこしも驚いたふりを見せなかった。いつでもコケティッシュになれるだけの用意があるし、じぶんの美しさに対するはっきりした自信を持っている。
さっきから指のさきを動かしながら、彼女は長い睫毛の下から、主人がいかに自分の魅力に心を奪われているかを観察していた。

男性の心理をくすぐる自分を知っているしぐさに言葉を使い折檻を逃れます。召使いと主人は結婚するのだけど、彼女の媚態と技巧にフヌキにされてしまいます。


一方アリスは、老人との望みもしない結婚を余儀なくされて、初日から恐るべき旦那の異常性壁にさい悩まされる。解放を夢みるアリス。だけど解放されたときの不安がつきまといます。

こうした不安があるほかに、もっと苦痛だったのは、絶えず夢みる解放された時と現在との矛盾が、前より強くするどく意識にのぼってきたことだ。この比較はときどき起こった。というのは、セレスタンにいじめられているときは恐怖に圧倒されてものを考える余裕もなく、飼い馴らされた動物のようになってしまうからだった。日夜くりかえされる苛虐と服従は習性となって身にしみこみ、彼のまえに出ると反抗する力は痺れてしまって、どんなひどい要求をされても泣き叫びながら従うほかなかった。
[ピエール・マッコルラン、『アリスの人生学校』より]

この小説では肉体的かつ精神的な苦痛を味わせられているのですが、現代でも「飼い馴らされ」ていることがあり、さらに声をあげられないという精神的苦痛も多々あるのではないでしょうか。いくら現実が理不尽できびしくとも新しい世界に踏みだすためにはかなりの不安と労力を要するものなのだ、ということも思いおこされます。

ここにはあげませんが、物語の最後の章のアリスの言葉は、つらいことを経験した人が語る言葉だなって感じました。

人道上許すべからざるおぞましいことや性的倒錯の話しも出てきますが、それぞれ登場人物の人間の奥底にひそむ性癖や、時代背景や逆らえない心理を描いていて興味深いなって思いました。


by momokororos | 2016-10-25 22:39 | | Comments(0)


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