珠玉の随筆~薄田泣菫さんの『獨樂園

この前の日記でちょっとだけ紹介した薄田泣菫さんの『獨樂園』。
とても素敵な随筆なので、しっかり紹介したいと思います。大阪水無瀬の長谷川書店さんで手にいれた珠玉の1冊です。

薄田泣菫さんは初めて読んだ作家さんです。

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花や鳥などのお庭の自然に向けるまなざしとその豊かな表現にひきこまれます。

短編の1つ『花を待つ心』。
「どちらを向いて見ても花の微笑みだ。」で始まる文章、蕾から花開く瞬間を待つ著者の気持ちをあらわした文章です。その気持ちよくわかります。
清純な文章の中にときに妖艶なところも見え隠れするところは、堀口大學さんの詩を思いだしましす。

また別な短編の『土に親しめ』には、
「北欧のある文人は、自分のポケットにいつもいろいろの花の種子を入れておき、至るところでそれを撒き散らして歩いたといふことだが、」というくだりがでてきます。
茨木のり子さんの『寸志』の中にはいっている大好きな詩の「花ゲリラ」にも同じようなくだりがでてきます。

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『花ゲリラ』 茨木のり子

あの時 あなたは こうおっしゃった
なつかしく友人の昔の言葉を取り出してみる
私を調整してくれた大切な一言でした
そんなこと言ったかしら ひゃ忘れた

あなたが或る日或る時 そう言ったの
知人の一人が好きな指輪でも摘み上げるように
ひらりと取り出すが 今度はこちらが覚えていない
そんな気障(きざ)なこと 言ったかしら

それぞれが捉えた餌を枝にひっかけ
ポカンと忘れた百舌(もず)である
思うに 言葉の保管所は
お互いがお互いに 他人のこころのなか

だからこそ
生きられる
千年前の恋唄も 七百年前の物語も
遠い国の 遠い日の 罪人の呟きさえも

どこかに花ゲリラでもいるのか
ポケットに種子をしのばせて 何喰わぬ顔
あちらでパラリ こちらでリラパ!
へんなところに異種の花 咲かせる


茨木のり子さんの詩の中でも大好きな詩です。

再び薄田の文章に戻ります。
「彼らは群生する。多くのものと一緒にゐるのが、生活の真の姿であるかのやうに。」
と薄田さんは見つめます。
多くのものと一緒にいる、ことの大切さと豊かさを感じます。

豊かな感性からつむぎだされる珠玉の言葉の数々に魅力され、しばし読むのをやめて描きだされる情景に想いをめぐらせてしまいます。

薄田さんの全集も発刊されていたことがあるみたいですが、また違う作品を見つけて読んでみたいです。
by momokororos | 2015-03-19 19:49 | 読書 | Comments(0)

かわいいもの、ちいさなものが大好きです


by ももころろ